2013年6月11日火曜日

リアルワークでの還元剤について自分なりに考察

還元剤について、パーマは人をハッピーにする事ができるツールであると私は確信しております、しかし理解できているようでなかなかというものが作りにくいのが現状です。といいますのも、メーカーさんの出す商品サイクルがとても速く、一つのパーマ剤を使いこなす以前に変えてしまう現状、あのお客様にはよかったけど・・今回はダメだったというパーマ剤に対する嫌悪感、知識不足。このサイクルを断ち切らないと、いつまでたっても材料コストがかかってしまいますし、満足のいく安定した仕上がりは実現できないでしょう。ここではanionというフィルターを通して1美容師の視点から整理できていただけたら幸いです。

還元剤は大きく分けて2種類

チオ系(チオ乳酸含む)
昔から使われてきた還元剤で、PH、アルカリがあがる事でパワーアップしていきます。長時間置く事で毛髪を収縮させる力が強く、主に縮毛矯正、油分バランスの強い髪や太い毛髪に対しても浸透し続ける特性を持ちます。

システアミン
近年になり使われ始めた還元剤で、チオと同じくアルカリが上がる事で急激にパワーアップしていきます。長時間置いても毛髪を収縮させる力は弱く、主にパーマ全般に対してのリッジのある柔らかなカールが出しやすく、乾いてもダレにくい特性があります。反面、時間が経つとウェーブがある程度もどってしまう特性もありますが、現在最も使われる還元剤です。

シンプルに考えてこの2つがあればとりあえずは仕事として成立します。

その他の還元剤

シス
これも昔から使われていますが、単体としては形成率が弱く、髪を柔軟にする特性があります主にダメージ毛に使われますが、形成不足の観点から、複合的な使い道が多いです。

サルファイト
昔はトリートメントパーマとして登場した還元剤、高アルカリ低還元といった特性を持ち、高い熱による処理が必要になります。現在ではやはり複合的な使い道で結果をもたらす場合が多いです。

酸性チオ
近年になってつかわれ始めたチオの中~酸性化されたバージョンで、主にワインディングローションとして使われる事が多いです。中性ですとウェーブ形成力はそこそこあり、シスとシステアミンの間の強さといったところです。酸性系の薬剤は総じて毛髪が収縮せずにボリュームが出すぎる傾向があり、使用は難しい還元剤です。

チオグリセリン・スピエラ・GMT

酸性でも効果を発揮する還元剤類で、使用するにはアレルギーの観点、毛髪診断の観点からシビアな判断が要求されます。主にハイダメージへのウェーブ形成、や他の還元剤の浸透を促進するために使われます。

これらの還元剤はサブ的な意味合いが強く、ちょっとしたパワーや質感の補足としての使用が望ましいです。

美しいパーマの還元領域

皆様は多くのケースでシステアミンを使用する事があるかと思いますが、私はシステアミンの浸透領域が毛髪中心に入り込みにくい為に髪の中心のSSを乱さず、ウェーブ形成状態を維持しやすい為に仕上がりが美しいと仮定しています。現に健康毛に対してはシステアミンでは浸透しにくく、アルカリ度を上げてしまうと高還元+高アルカリで高速にダメージが進んでしまいますし、そういったケースではチオを使ったほうがダメージ毛にシステアミンを使った質感に近くなります。これはシステアミンの持つ還元剤特性の影響もありますが、健康毛に対してのチオの反応が普段システアミンが還元している領域に留まる為と考えています。浸透しすぎずに、しっかりと還元する事が美しいウェーブの形成に関わると仮定することができます。


失敗しない為の考え方(ウェーブ・還元剤編)

毛髪の状態チェック

太さ・メラニン量 
ハイトーンになっているケースや元々色素が薄い人、白髪などは中身がスカスカになっている場合が多いのでシステアミンのみの施術。逆にしっかりした髪質の人はチオをアクティブにチョイスしたほうがよい結果が出やすいように思います。

クセ毛
自分の癖が出やすい為、還元はチオをミックスする必要性があり、比較的内部還元+熱処理が必要な場合があります。ロッド径も上げる工夫が必要です。

アルカリダメージ量
ドライ時の引っ張り強度、ウェット時の引っ張り強度を測る。ドライ時点、ウェット時点で伸びるようならパーマはかなり減力した薬剤選定が必要。

上記チェック要項から今の毛髪レベルを極端な毛髪を除き、約3段階程度に割り出します。基本はノンアルカリタイプの中性システアミンをワインディングローションとし、濃度約2%~5%です。(5%の場合中性ノンアルカリタイプ)質感調整で後からシステアミンをつけて放置する場合もありますが、チオのコントロールが難しい為ノンアルカリ(低アルカリ)システアミンでチオ浸透の制限をかけます。

ダメージレベル0
油分バランスがしっかりとしていてキューティクルもしっかりしている髪。この場合は前処理なしでのワインディングローション、システアミン3%~5%程度(濃度は太さに応じて)アルカリ度は低めの物をドライ塗布で巻きます。(一般的には一番真ん中のシステアミン)アルカリ度数が高い物ですといきなりボロボロになるケースがあるのと、膨潤によりかかったと勘違いしやすいため低アルカリがオススメです。プレシャンプーを洗浄力の強いアルカリ系シャンプーで油分を取り除いておくとワインディング後に曲がっているケースもありますので、やや細めのロッドで巻くとアクティブ剤を弱く設定できます。
アクティブ剤(後乗せする2番目の強い還元剤)はワインディングローションでの曲がりから想定して3種類チョイスできます。ある程度アルカリが高い物のほうが速く浸透しますが、高アルカリシステアミンだけは還元力が強過ぎて水洗後に失敗の要因になりますのでチオを使っていくほうが懸命です。アルカリ剤の組み合わせには大まかに3種あり1、アンモニア+アンモニウム系(立ち上がりが速く後は横ばい)2、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム系(立ち上がりが遅く、後から急激に強くなるタイプ)3、モノエタ系(反応が一定)いずれも一長一短で、弱すぎる物を使ってしまうと時間だけかかってしまいますので、ある程度パワーのあるものでチェックをマメにすれば失敗することはまずないでしょう。

ダメージレベル1~2
ややパサつきを感じるが腰はしっかりしている髪この場合も基本前処理は要りませんが、質感調整で軽めの物をつけるといい結果が得られやすいです。定義としては1カラー~1カラー+1パーマ毛。カラー毛基準なので薬剤の浸透経路はある程度確保されています。ということはプレローションはアルカリの必要は無いので、システアミン濃度3~5%アルカリ度2~0%程度でいきます。考え方としてはにチオモノエタ系か炭酸アンモ系(短時間で上げることで穏やかな反応で終わらせる)で浸透させていきます。プレローションを使う意味合いとしては、複合ダメージの検索があり、毛先など弱っている部分はプレのみでかかってしまう事もあります。いわば安全装置のようなものです。ですから、塗布段階で薬剤の塗りわけという事や毛先の前処理というものがこのレベルから必要になる場合もあります。アクティブ剤はプレの曲がりにもよりますが、基本アルカリ中高程度のシステアミン・チオ混合タイプをそのまま使用するか反応の穏やかなチオ剤を使います。考え方としては低アルカリシステアミンが浸透できるか検索してからチオとアルカリが階層を深めるイメージです。

ダメージレベル3~4
パサつきがひどく毛髪の状態が細い、元は太いが、メラニンがスカスカで腰がない状態、頻繁な白髪染めやホームカラー、プラス年齢による毛の腰がない状態。実質このレベルが一番失敗しやすいかと思います。考え方としてはシステアミン濃度3%アルカリ度3%~システアミン濃度2%アルカリ度0%の範囲で考えますが、この場合薬剤の浸透を阻害しないと失敗するケースが増えてきます。特に触れただけで髪の柔らかさが出ていたら浸透しすぎ注意です。ここで活躍するのが高分子架橋、低分子による薬剤浸透の阻害でシステアミンの浸透を抑えることにより安心して施術することができます。特にハリが出にくい髪に対してはカチオン系高分子の相性が良いです。架橋さえしてしまえばアクティブは低アルカリシステアミンで安心して施術ができます。

最近ではハイブリッド還元剤の流行もあり、それを使っていればまず失敗のない施術ができるのも事実で、私も最近は使用チェックを始めましたが凄く綺麗にかかります。ただ、ハイブリッドに知識を任せて施術してしまうと応用が利かなくなりますので、思わぬ失敗を招きかねないと思います。自分なりの主軸となる理論を形成したうえでのハイブリッド還元剤は鬼に金棒ですから、是非還元剤の特性を自分で確かめる事をしてみてください。次回は施術プロセスでのパーマデザイン(予定)です。ご期待ください。